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根拠に基づく実践とはEvidence based Child Care

プロとしての根拠に基づく実践とは

プロというためには何が必要だろうか

1. プロ魂(プロとしての哲学)
 プロ魂とは、「どんな時でも子どもと保護者の最善の利益を守る」という強い信念です。子どもの育つ力、保護者の子育て力、地域や社会の子育て力をエンパワメント(力を引き出す、元気にする、絆を育む)、すなわち「育つ力と育てる力をはぐくむ支援」に最大限の力を発揮することです。

2. プロ技(プロとしての知識と技術)
 プロ技とは、「科学的な根拠」と「経験的な根拠」に裏付けられた豊かな知識と技術です。プロ技を発揮するためには、さまざまなツール(道具)を使うことが有効です。


それでは根拠とは? なぜ今、根拠に基づく実践が必要なのか

 根拠とは、あなたの実践がそれでよかったと証明できる「よりどころ」のことです。
 少子化時代。核家族が増え、祖父母や親戚からの経験的な育児方法の伝達が減っています。近所付き合いが希薄になり、育児が孤立しつつあります。メディアによる育児情報の氾濫により、その通りに育児できない不安や自信喪失が広がっています。保育所、幼稚園、こども園など、子育ち・子育て支援への期待は高まる一方です。そのような中、子どもも保護者も、専門的な根拠に基づく情報と支援を求めています。 また、支援する専門職の側も大きな転機を迎えています。さまざまなニーズに対応するために、これまでの個別のかかわりの枠を越えた、さまざまな専門職のチームワークが求められているのです。必要なのは、領域を超えた専門職の「共通言語」、すなわち「根拠のある技術」です。プロとしての根拠に基づく実践が強く求められているのです。
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根拠に基づく実践のポイント

必要とされる3つの技術

1. 子どもや保護者、社会が訴えたり表現したりすること
   (「主訴」)から「真のニーズ」を見極める技術。
2. 真のニーズから子どもと保護者、社会に「もっとも適切な
    実践」を実施する技術。
3. 実践を「評価(本当に効果があったのか?)」して、さら
    によりよい実践に生かす「フィードバック」技術。

実践のために必要な視点

1. 子ども        2. 保護者や専門職      3. かかわり      4. 環境


子育ち環境に必要な8つの条件

1.  日常生活の中に多様性に富んだ人とのかかわりの機会があること
2.かかわりが情緒的で言語的な反応性に富んでいること
3.制限や罰が回避されていること
4.年齢相応の自主性が尊重されること
5.子どもの発達状態に見合った物的な刺激(おもちゃなど)が存在すること
6.子どもの外出機会がありさまざまな外部社会に触れること
7.子どもの発達を配慮した安全な物理的な環境が整備されていること
8.日常生活の中で育児に対する社会的なサポートがあること

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根拠と評価・気づき

 子育て・子育ちエンパワメント(育つ力と育てる力をはぐくむ保育)プロの技法は、「評価」が基盤になります。


支援における評価

 子どもの育ちや保護者の育児はさまざまです。「育つ力と育てる力をはぐくむ支援」について、何を基準にして評価するのかは難しいことです。ここでは、あくまでも「子どものすこやかな発達と健康」を中心に考えます。子どもの発達と健康にとって好ましい影響を与える環境が用意されているか。それを評価の基準としていきます。

 もちろん、一面的な評価は危険です。
 ここでいう「すこやかな発達」とは何でしょう。ほかの子どもと同じペースで何かができるようになること? 気になる行動がないこと? その気になる行動は、だれにとって何が気になって、本当に「気になる」と言えることなのでしょうか?

 一方で、科学的に測ることが難しい他の子どもへの思いやり、のびのびとした意欲、新しいことへの適応性、精神的な安定性、幸福感、新しいものへの興味、創造性などは、「すこやかな発達」のきわめて重要な要素です。つまり、「すこやかな発達」の評価には、つねに限界のあることを理解しながら活用する必要があるのです。 限界を意識しながら、「総合的な評価」「継続的な評価」を心がけます。すなわち、本質を見失うことのないよう、子ども、保護者、それをとりまく家族、近隣や地域のさまざまな側面から確認します。ひとつの側面にとらわれず、全体の流れから何を意味しているのかをくみ取ること。また一回ではなく、子どもの発達にそって、定期的にチェックすることが求められます。

 「評価」という道具は、あくまでも「ひとつの道具」にしか過ぎないことを肝に命じましょう。だからこそ、さまざまな道具(ツール)を「プロの技術」として持っておく必要があるのです。


根拠と気づき

 家庭での養育力の低下や育児の孤立化、保育ニーズの多様化が進行する中、保育所や幼稚園には、さまざまな問題の「発生予防」から「早期発見」「早期対応」まで、重要な役割が期待されています。従来からの機能に加えて、地域子育て支援、虐待予防、小学校との連携による卒園後のフォローアップ、保護者への相談、子育て支援ネットワークへの参加など、多様な子育てニーズに対応できる高い専門性が求められています。地域の他の施設機関や専門職、住民などと連携をとりながら、チームとして活動する機会も少なくありません。 

 保育所や幼稚園は、日々のかかわりの中で対応できる強みを生かすとともに、支援について「根拠のある説明ができる」という説明責任を果たすための専門技術の向上が必須となっています。

 実践の場では、「配慮の必要な子どもへの保育」について、職員会議やケース検討会を実施しています。しかし、本当にこれでよかったのか、この方法がもっとも適切だったのか、主観的な見方ではなかったのかなど、いろいろな問題点や疑問点が出てきます。それを解決する方法として、根拠に基づく実践が有効なのです。ここで紹介するさまざまなツールは、根拠への「気づき」を促す道具です。「根拠に基づく実践」と「気づき」につながる観察眼を磨くことが専門性を高める手段なのです。


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根拠に基づく実践の意義と効果

実践での根拠の活用の意義

 第一に、「情報の共有化」があげられます。
保護者をはじめ、専門職同士がともに話し合う時に、情報を確実に共有することができます。

 第二に、「視点の統一」があげられます。
個人的な思いこみをできるだけなくして、一定の視点から皆で把握できるようになります。

 第三に、「客観的な内容の統一」があげられます。
集めた情報を、専門職だれもが正確に利用し、チームワークを組んで、情報を適切に伝えることができます。

 第四に、評価される人自身の「啓発」があげられます。
根拠を示すことで、子どもや保護者、地域の人など、評価される人自身が自らの生活の側面に気付き、また改善していくきっかけとすることができるのです。


根拠を実践に使うことにより得られる効果

1)より良い実践への改善ができる
2)子どもと保護者の将来予測に基づいた実践ができる
3)実践の長期計画が策定できる
4)保護者と実践の意義を共有することができる
5)他の専門職と連携がスムーズにできる
6)質の高い実践について地域や社会に提案できる
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